水やりの曜日を決めるのをやめました|胡蝶蘭の根と水苔が出す合図の読み方
「毎週日曜は胡蝶蘭に水をやる日」。
以前の私はそう決めていて、ある冬に一鉢の根を傷めてしまいました。
鎌倉で園芸ライターをしている白川紗英です。
決まった日に水をあげているのに元気がない鉢があるなら、原因は水の量より日の決め方かもしれません。
水やりの日は、カレンダーではなく鉢の中を見て決めるものでした。
水苔、根の色、鉢の重さから時期を読む方法と、贈られた寄せ植えの扱い方、季節ごとの確認の目安をお伝えします。
「週に1回」がうまくいかない理由
同じ日数でも、乾き方は部屋と季節で変わります
胡蝶蘭を扱うAND PLANTSの胡蝶蘭の水やり解説では、春と秋は10日に1回、夏は2〜3日に1回、冬は2週間に1回を目安に挙げています。
同じ記事に、日数はあくまで目安で、水苔を触って確かめるようにとも書かれています。
夏と冬で何倍も開く数字を、一年じゅう同じ曜日に当てはめるのは無理があります。
暖房の効いたリビングと、夜に冷え込む北側の部屋でも、同じ鉢の乾き方はまるで違います。
私が失敗した鉢は、その北側の部屋に置いていました。
水苔がまだ湿っているのに、日曜だからと水を足し続けたのです。
春に鉢から抜いてみると、根の半分ほどが黒くなっていました。
胡蝶蘭の根は、濡れて乾くのをくり返したがっています
胡蝶蘭は土ではなく、樹木の幹や枝に根を張って暮らす着生植物です。
自生地の根は雨に濡れても、やがて風にさらされて乾きます。
鉢の中が湿ったままだと根は酸素を取り込めなくなり、根腐れにつながっていきます。
神奈川県大和市が公開している植物の相談Q&Aでも、コチョウランの失敗の原因として水のやりすぎを挙げています。
回答に示された目安は、鉢の上のほうの水苔が乾いて2〜3日してから、たっぷり与えること。
水をあげる回数より、乾かす時間を確保すると考えたほうが、私はうまくいくようになりました。
水やりの前に確かめる、鉢からの合図
水苔は、指で押して中の湿り気を見ます
表面が白っぽく乾いて見えても、中はまだ湿っていることがよくあります。
指で水苔を押してみて、湿り気を感じなくなった頃が水やりの頃合いです。
私は人差し指の第一関節あたりまで、そっと差し込んでいます。
指先がひんやりするうちは、まだ待ちます。
冬の寒い部屋なら、乾いたと感じてからさらに2〜3日置くくらいで、ちょうどいいと感じています。
透明ポットなら、根の色と張りが教えてくれます
メリーランド大学エクステンションの胡蝶蘭の栽培ガイドは、気根(鉢の外に伸びた根)が鈍い銀色や白っぽい色から淡い緑に変われば、水が足りた合図だと説明しています。
逆に言えば、銀白色に戻ってきた頃が、次の水やりを考える時期です。
根の見分け方は、シュクペディアの胡蝶蘭の水やり解説に整理された内容を参考に、次のように読んでいます。
| 根の様子 | 読み取れること | どうするか |
|---|---|---|
| 鮮やかな緑で硬い | 水が足りている | そのまま待つ |
| 銀白色で張りがある | 水やりの頃合い | 水苔も乾いていれば与える |
| 白くしわが寄り、弾力がない | 水切れ | 早めに与える |
| 黒や茶色で、ぬるぬるして柔らかい | 根腐れの疑い | 傷んだ根を切って植え替える |
根の色の呼び方は、解説によって少し違います。
白い根を健康な状態とする記事もあるので、色だけで決めず、触ったときの硬さも一緒に見てくださいね。
鉢の重さを、手に覚えてもらいます
水やりの直後に鉢を持ち上げて、重さを覚えておきます。
乾いた頃にもう一度持つと、水苔の鉢は驚くほど軽くなっているはずです。
最初の1か月だけ、水やりの前後に鉢を持つ習慣をつけてみてください。
台所のはかりで量ってメモしておくと、感覚をつかむのが早くなります。
合図が食い違うときは、1日待ちます
3つの合図がいつも揃うとは限りません。
私が迷いやすい場面と、そのときの判断を挙げておきます。
- 水苔の表面は乾いているのに根が緑のままなら、中がまだ湿っていることが多いので待つ
- 根は銀白色なのに水苔が湿っているなら、根が水を吸えていない場合もあるので、葉の張りも見ながら数日待つ
- 鉢が軽く、水苔が中まで乾き、根も銀白色なら、迷わず与える
どちらとも言えないときは、私は1日待つことにしています。
胡蝶蘭は乾燥には比較的強く、数日の遅れより、湿ったままの鉢のほうが後々まで響くからです。
贈られた寄せ植えとバーク植えは、見るところが変わります
3本立ちは、飾り苔の下のポットを確かめます
贈答用の胡蝶蘭の多くは、株ごとにポリポットに入った状態で寄せ植えされています。
表面の飾り苔を触っても、ポットの中の様子はわかりません。
苔を少しめくって、水苔に直接触れてみましょう。
大きな陶器の鉢に入っていると、重さの変化もつかみにくくなります。
窓に近いほうのポットだけ先に乾くこともあるので、1株ずつ確かめるのが確実です。
ラッピングが残っていたら、蒸れて根腐れの原因になるため、早めに外しておきます。
届いたばかりの鉢に、すぐ水を足す必要があるとは限りません。
まず飾り苔の下を触って、湿っていれば乾くまで待ちましょう。
お祝いの席で鉢をいただいた方から「週に1回あげていたら弱ってしまって」と相談を受けることがありますが、苔をめくると中の水苔がぐっしょり濡れていた、ということも少なくありません。
バーク植えは乾きが早く、指も入りにくい素材です
チップ状の樹皮に植えられた株は、水苔より乾くのが早めです。
シュクペディアの解説では、水苔が1週間から10日に1回、バークが5日に1回程度とされています。
バークは指で湿り気を探りにくいので、私は重さと根の色を頼りにしています。
透明ポットのものを選んでおくと、根が見えて判断がずっと楽になります。
与えるときは、たっぷり与えて、きちんと水を切ります
量は「全体に行き渡ること」を基準にします
底穴のある鉢に1株で植えられているなら、鉢底から水が流れるくらいまで与えます。
3本立ちの寄せ植えは、AND PLANTSの解説にあるコップ1杯(150cc)を1株の目安にして、株元を狙って注ぎます。
バーク植えの場合は、メリーランド大学のガイドが紹介している方法が便利です。
シンクに鉢を置いてぬるめの水を流し、10分ほどの間に3〜4回かけて、少しずつ吸わせます。
少しの水を毎日足すやり方は、いちばん避けたいところです。
表面だけが濡れて中まで届かなかったり、鉢の底が乾く間もなく湿り続けたりします。
受け皿と鉢カバーに水を残しません
水やりから10分ほどたったら、受け皿にたまった水を捨てます。
鉢カバーの底は見えにくいので、傾けて確認しましょう。
私はシンクやバケツの中で水やりを済ませて、水が切れてから元の場所へ戻しています。
午前中に、冷たくない水で
時間帯は朝から午前中が基本です。
夏は暑くなる前の朝のうちに、冬は気温が上がってくる10時以降に済ませ、夕方以降は避けます。
水温については、冬はぬるま湯をすすめる店が多い一方で、必要ないとする解説もあります。
私は手で触って冷たくない程度の、室温に近い水を使っています。
それ以上に気をつけているのは、濡れたまま寒い夜を迎えさせないことです。
間隔が変わる時期と、迷いやすい症状
カレンダーは「確かめる日」に使います
水やりの日を決める代わりに、鉢を確かめる日を決めておくと忘れません。
AND PLANTSの目安をもとにすると、次のような間隔になります。
| 時期 | 水やりの間隔の目安 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 春・秋 | 10日に1回 | 1週間たったら触ってみる |
| 梅雨 | 10〜15日に1回 | 乾きにくいが、冷房を使うと早まる |
| 夏 | 2〜3日に1回 | こまめに確認する |
| 冬 | 2週間に1回 | 10日前後で確認する。暖房の部屋は早まる |
夏については週に1〜2回とする解説もあり、数字には幅があります。
表は「このくらいで一度見に行く」ための目安として使ってください。
あわせておすすめしたいのが、水やりの記録です。
水をあげた日と、次に乾いたと感じた日を手帳に書いておくだけで、2〜3回も続ければ自分の部屋の間隔が見えてきます。
わが家の窓辺と教室の棚でも、同じ大きさの鉢で乾くまでの日数が違っていました。
10月末から11月にかけては、夏の間隔のままだと湿りがちになる時期です。
少しずつ間を空けていきましょう。
冬の置き場所については、夏の暑さ・冬の寒さから守る!季節別・胡蝶蘭の置き場所と温度管理にまとめています。
花芽が伸びる時期と開花中は、乾きが早くなります
花芽がぐんぐん伸び始めると株が水をよく使うようになり、急に水苔の乾きが早くなることがあります。
花が開いている間も、水を切らさないよう確認の回数を増やします。
花に水がかかるとシミの原因になるので、注ぐのは株元だけに。
花が終わって葉だけになった株は、開花中より少し間を空けます。
植え替えの直後も根が傷んでいるため、すぐには与えず、春なら2週間ほど置いてから水やりを始めます。
葉がしわしわのときは、水を足す前に根を見ます
葉のしわは水切れの合図として知られていますが、根腐れでも同じ症状が出ます。
根が傷むと、水があっても吸えなくなるからです。
水苔が湿っているのに葉がしわしわなら、水を足さずに鉢から抜いて根を確かめてください。
黒くてぬるぬるした根は清潔なハサミで切り、新しい水苔に植え替えます。
水苔がからからで、根が白くしぼんでいるなら水切れです。
ひどいときは鉢ごと室温程度の水に30分ほど浸けると、根に水が戻りやすくなります。
まとめ
胡蝶蘭の水やりは、日数よりも鉢の中の様子で決めると失敗が減ります。
指で水苔を押す、根の色と張りを見る、鉢を持ち上げる。
どれか1つからで大丈夫です。
贈られた3本立ちなら飾り苔の下を、バーク植えなら重さと根を見てください。
合図が揃わないときは、1日待っても間に合います。
私は今でも日曜日を大切にしていますが、水をやる日ではなく、鉢を持ち上げる日に変えました。
あの冬に根を傷めた株も、植え替えてから3年かけて、また花をつけてくれています。
今度の週末、水差しを持つ前に、まず鉢を手に取ってみてくださいね。
